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見積書の「通気緩衝工法」とは?なぜ屋上の湿気を逃がす必要があるのか

ビルや賃貸マンションを所有するオーナーの皆様にとって、修繕工事の見積書に並ぶ専門用語は悩みの種になることも多いのではないでしょうか。とくに屋上防水の項目で頻出する「通気緩衝工法」という言葉を目にして、なぜわざわざこのような工法が提案されているのか、疑問にお感じになることもあるかもしれません。

本記事では、この工法の役割と、採用すべき状態について解説します。

「通気緩衝工法」という言葉の意味と役割

通気緩衝工法とは、主にウレタン防水工事において採用される施工方法の一つです。一言で表すと、「下地(コンクリート)と防水層の間に空気の通り道を作り、同時に下地の動きを和らげる工法」です。

通常の防水工事では、下地に直接防水材を密着させますが、通気緩衝工法では専用のシートを敷き詰めた上に防水材を塗布します。これにより、建物を水から守るだけでなく、建物内部に潜む「湿気」をコントロールし、防水層が早期に劣化するのを防ぐという重要な役割を担っています。

建物内部の湿気が防水層を突き上げる「膨れ」の発生する背景

屋上の湿気を逃がす必要があるのは、コンクリート内部の水分が膨張し、防水層の「膨れ(フクレ)」という実害トラブルを引き起こすからです。

築年数が経過したビルやマンションの屋上コンクリートには、微小なひび割れなどから長年の雨水や結露が浸入し、水分が蓄積されています。この水分が日射熱によって温められると、水蒸気へと変化して体積が大きく膨張します。 もし防水材がコンクリートに隙間なく密着していると、行き場を失った水蒸気が防水層を下から力強く突き上げてしまいます。これが、屋上でよく見られる防水層の「膨れ」が発生する背景です。

膨れた部分は物理的な強度が極端に落ちるため、少しの衝撃や経年劣化で破裂し、そこから深刻な雨漏りへと直結してしまいます。

通気シートと脱気筒(だっきとう)が果たす役割

この水蒸気による膨れトラブルを未然に防ぐのが、通気緩衝工法で用いられる2つの部材です。

  • 通気緩衝シートの構造と役割 下地の上に敷く特殊なシートです。裏面に微細な溝などが設けられており、水蒸気が逃げるための「空気の通り道」となります。また、下地コンクリートにひび割れが生じた際、その動きをシートが吸収(緩衝)し、表面の防水層まで一緒に裂けてしまうのを防ぐ役割も持っています。

  • 脱気筒(だっきとう)の役割 通気緩衝シートの下を通って集められた水蒸気を、最終的に外部へと排出するための筒状の器具です。屋上に一定の間隔で設置され、いわば水蒸気の「煙突」として機能します。

既存の防水層を活かせるか否かの判断基準

不動産オーナーの皆様にとって、現在の防水層を撤去するのか、それとも上から重ねて施工できるのかは、莫大なコストと手間に直結する現実的な課題です。

既存の防水層をすべて剥がして下地からやり直すとなれば、大量の廃材処分費や人件費が上乗せされ、数百万円から数千万円規模の出費増になるばかりか、作業音や工期の延長によって入居中のテナント・居住者への影響も避けられません。

しかし、既存の防水層の劣化が一定の範囲に収まっており、極端な浸水が見られない場合は、既存層の上に通気緩衝シートを敷設して新しい防水層を作ることも可能です。既存層を活かせる状態であれば、撤去費用と工期を大幅に抑えつつ、確実な防水性能を確保できます。一方で、すでに広範囲で水が回ってしまっている状態であれば、既存層の撤去は避けられません。

予算と工法のバランスをどう取るか

修繕費用を抑えるために、見積もりが安価な密着工法(直接防水材を塗る工法)を選びたくなる心情は当然のものです。しかし、水分を含みやすい古い建物の屋上に密着工法を採用した結果、数年で大規模な膨れが発生し、結局は全面的な再工事となって莫大なコストがかかるケースも少なくありません。

不要な工事でコストを膨らませるべきではありませんが、物理的な実害リスクを無視して安価な工法に飛びつくことも、長期的な賃貸経営においては避けるべき選択です。そのため、現在の状態を正確に診断し、どの工法を採用すべきか具体的に見極める必要があります。

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