夏の防水工事・外壁塗装は大丈夫?猛暑日の屋上で起きる不具合と工期の読み方
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ビルや賃貸マンションを所有するオーナーの間では、「真夏の防水工事や外壁塗装は避けたほうがよい」という話がよく聞かれます。確かに夏の現場には注意すべき点が多いのですが、その理由を正しく知っておくと、工事時期の判断や業者との打ち合わせがぐっと具体的になります。ここでは、猛暑の環境が塗料や防水材に何を起こすのか、そして工期をどう読むべきかを整理します。
塗料・防水材には「施工できる気象条件」がある
塗料や防水材のメーカーカタログには、気温5℃未満、湿度85%以上の環境では施工しないよう明記されています。低温や高湿の環境では塗膜がうまく乾燥せず、密着不良や剥がれの原因になるためです。この条件だけを見れば、気温が高く晴天の続く夏はむしろ施工向きの季節です。実際、塗料の乾燥が早く進むため工程が流れやすく、日照時間が長いぶん1日あたりの作業量も確保しやすいという利点があります。
問題は、気温が「高すぎる」場合です。東京圏でも近年は35℃を超える猛暑日が珍しくなくなりました。直射日光を受けるビルの屋上や屋根の表面は60℃を超えることもあり、材料が想定する施工条件を大きく外れてしまいます。夏の工事が敬遠されがちなのは、この「上限側」の事情によるものです。
猛暑日の不具合は「乾きすぎ」から始まる

2液型の塗料や防水材は、主剤と硬化剤を混ぜてから使用できる時間(可使時間)が決まっており、一般的には2〜3時間程度です。ところが猛暑日の現場では材料自体の温度が上がって硬化反応が早く進み、この時間内でも粘度が上がって塗りにくくなることがあります。
塗料の乾燥が早すぎると、ローラーや刷毛の跡が均されないまま塗膜になり、仕上がりにムラが残ります。さらに注意したいのが、表面だけが先に乾いて内部に水分や溶剤が残る「見かけ乾燥」です。この状態のまま次の工程に進むと、後になって塗膜の膨れや剥がれを引き起こすことがあります。施工直後の見た目には問題がないだけに、引き渡しからしばらく経って発覚しやすい厄介な不具合です。
加えて、夏の東京圏では夕方の急な雷雨も無視できません。乾燥途中の塗膜に雨が当たれば塗り直しになり、防水工事では下地が濡れて翌日の作業が丸ごと止まることもあります。夏の工程表に予備日が多めに組まれるのは、こうした天候急変を織り込んでいるためです。
屋上防水は「下地に残った水分」が膨れを生む

ビルの屋上で広く使われるウレタン防水では、下地のコンクリートに含まれた水分が大敵になります。防水層をかぶせた後、夏の強い日差しで下地が熱されると、内部の水分が水蒸気になって膨張し、防水層をゴム風船のように押し上げる「膨れ」を起こします。膨れた部分の塗膜は薄く伸びて切れやすくなり、そこから雨水が入り込めば、防水工事をしたのに漏水するという本末転倒の事態になりかねません。
雨漏りの履歴がある屋上や、梅雨明け直後で下地が水分を含んでいるケースでは、下地と防水層の間に通気シートを敷き、脱気筒から湿気を逃がす「通気緩衝工法」が採られます。下地に直接塗り重ねる「密着工法」との違いは次のとおりです。
| 工法 | 特徴 | 夏場・改修時の適性 |
|---|---|---|
| 密着工法 | 下地に防水材を直接塗り重ねる。工程がシンプルで費用を抑えやすい | 下地の状態に左右されやすく、水分が残っていると膨れの原因になる |
| 通気緩衝工法 | 通気シートと脱気筒で下地の湿気を外へ逃がしながら防水層をつくる | 下地に多少の水分があっても施工でき、膨れや剥がれが起きにくい。費用は密着工法より高め |
どちらが適するかは、下地の含水状態や雨漏り履歴を実際に調べてみないと判断できません。見積の段階で「なぜこの工法なのか」を下地の状態とあわせて説明できる業者かどうかは、施工品質を見極めるひとつの目安になります。
テナント・入居者への負担は夏がいちばん重い
施工品質とは別に、建物を使いながら工事を進めるビルや賃貸マンションでは、夏特有の負担も考えておく必要があります。塗料や防水材の臭気は気温が高いほど強く感じられやすく、施工範囲によっては窓を開けられない期間が生じます。冷房が使える時期とはいえ、バルコニーの使用制限や室外機まわりの作業と重なると、入居者やテナントからの問い合わせは増えがちです。工事案内の掲示や個別の事前説明を早めに手配しておくと、クレームの多くは未然に防げます。
また、職人の熱中症対策として、作業を比較的涼しい午前中に寄せたり休憩を増やしたりするため、真夏の工期は見た目の作業日数より余裕を持って組まれます。「夏は乾きが早いから工期が短くて済む」とは一概に言えないのが現場の実情です。
工事の時期は「季節」より「建物の状態」と「段取り」で決める
夏の工事は、材料の温度管理、作業時間帯の調整、天候急変時の中断判断と、管理すべき項目が確かに増えます。裏を返せば、これらの対策を工程に織り込める体制さえあれば、真夏でも品質を確保した施工は十分に可能だということです。一方で、施工しやすい春や秋は各社の予定が埋まりやすく、希望の時期に着工できないこともあります。
防水層の劣化やひび割れがすでに進んでいる建物で、「夏だから」という理由だけで工事を先送りすれば、ゲリラ豪雨や台風シーズンの漏水リスクをひと夏まるごと抱え込むことになります。工事のタイミングは季節の印象で決めるのではなく、現在の劣化状態を正確に診断したうえで、テナント対応まで含めた段取りの現実性から逆算して決めることが、結果として手間もコストも小さく抑えることにつながります。