外壁タイルの「浮き」はどんな状態?
コラム
外壁は、日頃じっくり確認する場所ではありません。表面が整って見えても、内部ではタイルが下地から少し離れ、空洞ができていることがあります。
この記事では、この「浮き」の仕組みや放置した場合に起こりやすいこと、そして判断のためのポイントを整理します。

外壁タイルの浮きとは

外壁タイルの「浮き」は、タイルが下地コンクリートとの付着力を失い、内部に空洞ができている状態です。
外観に変化がなくても、内部だけ劣化しているケースは珍しくありません。
浮きが起こる背景には、次のような要因があります。
・経年による付着力の低下
・季節ごとの温度差で外壁がわずかに動く影響
・目地からの雨水侵入
・新築時の施工精度の差
外壁は普段あまり注意して見ないため、気づきにくいのが特徴です。
浮きを疑ったほうがよい外壁のサイン
外壁タイルの浮きは見た目だけで判断するのが難しいものですが、次のような状態がある場合は、内部で劣化が進んでいる可能性があります。
- タイルがわずかに盛り上がって見える
- 同じ位置でひび割れが発生している
- サッシ周りや笠木に雨染み・劣化跡がある
- 築10年以上で打診調査などの精密調査をしたことがない
- 目地に白い汚れ(エフロレッセンス)が出ている
どれも、浮きが発生しやすい位置で見られやすいサインです。
外壁タイルの浮きを放置するとどうなる?
浮いた状態は自然に戻りません。
放置すると、次のような流れで劣化が進む可能性があります。
■雨水が内部に入りやすくなる
浮いてできた空洞に水が入り込むと、付着力がさらに弱まり、劣化の進行が早くなります。
■温度差による膨張・収縮の影響が蓄積する
外壁は季節によってわずかに動くため、浮いた部分に負荷がかかります。
■外壁タイル落下の可能性
浮きが進むとタイルが剥がれ落ちるケースがあります。
落下が第三者に当たった場合、建物所有者が賠償責任を問われる可能性があります(民法717条)。
■修繕費が大きく変わる
初期段階であれば部分補修で済むことが多いですが、劣化の範囲が広がると張替えや足場設置が必要になるなど、工事規模に差が出ます。
外壁タイルの浮きを確認するための調査方法
外壁の状態を正確に把握するには、専門業者による調査が必要です。
一般的に次の方法が用いられます。
■目視調査
外観のひび・段差・汚れなどを確認する基本調査。
■打診調査(外壁タイル調査の基本)
タイルを軽く叩き、音の違いで空洞の有無を判断します。
外壁タイルの精密調査として広く行われています。
■赤外線調査
外壁表面の温度差を解析し、内部の異常を広い範囲で確認します。
ただし、日射条件など環境の影響を受ける場合があります。
浮きが見つかったときの補修方法
劣化の程度に応じて、次の工法が選ばれます。
■ピンニング工法(部分補修)
ステンレスピンと樹脂でタイルを固定する方法。
軽度〜中程度の浮きに適しています。
■タイル張替え
浮きに加えてひび割れや欠損がある部分に行います。
劣化した範囲をまとめて対処できます。
■外壁全面改修
広範囲に浮きがある場合や、長期間放置されていた場合に行います。
費用・工期が大きくなるため、早めの把握が重要です。
まとめ:外壁タイルの浮きは「早めの把握」が費用を左右する
外壁は、内部の変化が見えにくい場所です。
ただし、浮きの段階で状況を知ることができれば、補修が最小限で済む可能性が高くなります。
・外観がきれいでも内部では劣化が進むことがある
・小さなサインを見逃すと費用差につながる
・判断が難しいときは調査で状況を明確にできる
建物の状態を正確に知ることが、結果的にコストを抑えるうえで大きな意味を持ちます。